現在の会社よりもよい職場環境を求めて転職活動を検討しても、「転職をするのが申し訳ない」と感じてしまうこともあります。
意外と多い「転職する申し訳なさ」を感じる必要がない理由と、転職の罪悪感を持つことのリスクについて徹底解説します。
転職で申し訳なさ、後ろめたさを感じ人は少なくない
日本人の誠実な性質が影響しているのか、転職に関して「申し訳なさ」を感じる人は以外にも少なくありません。
約30%の人が転職に罪悪感を感じる
リクナビが転職経験者にアンケート調査した結果、転職活動をすることに対して、意外にも多くの人が罪悪感を感じていたことがわかりました。
罪悪感を意外と多くの人が感じていたことがわかりますが、罪悪感を感じながら、92.6%の人は転職活動を続けていたこともわかっています。
自分のためのキャリア形成をするための転職であるはずなので、そこまで罪悪感を感じる必要はないはずです。
後述するように、罪悪感を感じ、転職活動の制限をしてしまうと生じるリスクもありますので、転職活動を考え始めたら、まずは自身のことを第一にして行動することをおすすめします。
転職を申し訳ないと思う人の声
転職を申し訳ないと感じる人は意外と多くいますので、その方々の声をいくつかご紹介します。
転職することを申し訳ないと感じる4つの理由
では、転職することを申し訳ないと罪悪感を感じてしまう理由はどこにあるのかをよくあるパターンに分けてご紹介します。
会社に残る人の仕事が増えてしまうから
自分が転職をして、現在の会社を去ってしまうと、自分がやっていた業務を誰かに引き継ぐことになります。自然と引き継ぎをした人の業務量を増やしてしまうことに繋がり、連鎖的に会社に残る人の1人あたりの仕事量が一時的にも増えてしまうことになります。
一緒に長い時間を共に過ごしてきた仲間に、自分の仕事を押し付けるようなこととなってしまうのは、気が引けてしまうということも理解できる内容ではあります。
育ててもらったことへの感謝があるから
現在の会社に入社して、研修や勉強の機会を与えてもらったり、日々の業務の中で先輩や上司からさまざまなことを教わってきたと感じている人は、「育ててもらった感謝がある」という理由で、今の会社を辞めることに抵抗を感じることがあります。
特に新卒で入社した会社は、非常に愛着があり、ゼロから業務の経験する機会が多いため、こういった育ててもらったことへの感謝があり、なかなか転職・退職に踏み切れないということがあります。
仕事を途中で放棄してしまうことになるから
大きな会社でのプロジェクトや、日々の業務の半ばにいる場合に、仕事を途中で投げ出すようになってしまうために、転職することについて罪悪感、申し訳なさを感じることがあります。
会社員である以上、基本的には会社から常に何かしらの業務・仕事を与えられているため、いつでも何かしらの途中ではありますが、特別な仕事やプロジェクトなどの場合、「選んでもらったのに、途中で…」というような罪悪感、申し訳なさはあるでしょう。
会社を裏切るような感覚になるから
これという理由ではなく、なんとなく「会社を裏切るような感覚」を持ってしまうことで、転職に罪悪感を覚える人もいます。
日本ではこれまで、終身雇用制度によって新卒入社から定年退職まで、1つの会社で勤めあげるのが美徳とされてきたため、「社員(会社) = 家族」に近いような認識を持つ場合も多く、そこを抜けるということで、裏切るような感覚になるということも多いのでしょう。
転職することで罪悪感を持つ必要がない5つの理由
では、転職することで罪悪感を持ってしまうことがいいことなのかというと、そういうわけではありません。できるだけ罪悪感は持たない方が良いと考えられます。
ここからは、転職することに対する申し訳ない感情や罪悪感を持つ必要がない理由について解説します。
代わりになる人がいるのが普通だから
会社を辞められない一つの要因として、自分の仕事が専門的で高度な仕事をやっているほど、「代わりになる人がいないのではないか」や「今自分が抜けてしまったら会社が傾いてしまうのではないか」というような感覚になり、退職・転職を躊躇してしまうことがあります。
しかし、代わりの人を用意していない(リスクに対処していない)のは、会社の経営陣の問題ですし、多くの会社員にとって代わりの人材は、社内・社外問わずたくさん存在しています。
日本国内トップクラスの大企業であるトヨタ自動車や、世界で最も有名な企業の1つであるアップルやマイクロソフト、Amazonの経営者という代わりがいなさそうな存在であっても既に交代しています。
それを考えれば、一般的な会社員の代わりの人材は条件次第でいくらでもいるということは理解できるのではないでしょうか。
そのため、自分が辞めてしまうと代わりの人が…という申し訳なさは一切感じる必要はないのです。
自分が感じるほど人は他人に興味を持っていないから
日本人によくある考え方として、周囲の人に自分がどう思われているのかを考え、周囲の人から嫌われないように、ネガティブな思いを持たれないようにという行動を起こしてしまいます。
しかし、例えば自分の職場に転職しようとしている人がいたとして、その人のことを悪く思ったりするでしょうか?
もちろん、自分の業務量が数倍に膨れ上がるような場合には一瞬そういった思いを持つこともあるかもしれませんが、多くの場合には、他人の転職が自分に大きな影響を及ぼすことがなく、自分に大きな影響が及ばない限り、他人の行動に興味を持たないのではないでしょうか。
そのため、自身が転職する場合にも、大きな影響がある場合を除き、会社に残る人からしても「あ、転職するのですね」程度のことでしかないでしょう。
もし、大きな影響があったとしても、あなたに問題があるのではなく、リスクを分散していなかった会社側に問題があることがほとんどであり、代わりになる人が入社してくればあなたに対するネガティブな感情もほとんどなくなるため、そこまで気にする必要はありません。
日本人でも2人に1人以上は転職しているから
日本では長らく終身雇用制度が適切に機能しており、1社に勤めあげることが美徳のような価値観が強かったことで、あまり知られていない事実ですが、2010年あたりから既に転職は当たり前のことになってきています。
転職エージェント大手のdodaが2011年に25〜39歳800人を対象にしたアンケート結果によると、社会人として働いている52.5%の人が「転職した経験がある」と答えています。
年代 | 転職をしたことがある |
全体 | 52.5% |
25〜29歳 | 35.3% |
30〜34歳 | 59.9% |
35〜39歳 | 53.5% |
また、2021年にリスクモンスター社が20〜69歳の社会人500人を対象にしたアンケート結果によると、転職経験ありの回答者は「56.6%」おり、男女別にみても男性が「50.0%」、女性が「63.2%」となっており、社会人の2人に1人以上は転職経験があることがわかります。
そのため、「最近は転職が当たり前になっている」ということがデータをみてもわかるように、転職することは一般的なことであるため、特別申し訳ない感情を抱くことはないのです。
職業選択の自由は労働者の権利だから
そもそも仕事を選ぶ権利を持つのは労働者(会社員)側です。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
日本国憲法 第22条第1項 より抜粋
憲法に示されているように、この国のルールとして、どんな仕事をどんな場所で行うかの自由が国民に保証されているのです。
もちろん、入社したい意欲があっても適性や会社との相性などによって入社が叶わないことや他の条例や法律によって法に触れるような職種・業種もありますが、今働いている会社を辞めて新しい会社に入社したいというのは、紛れもなく、憲法に定められた自由の範囲内であり、権利なのです。
会社で働き、その対価として定められた給料をもらうことに対して罪悪感を感じる人は少ないでしょう。これは会社に対して労働力を提供して、対価として給料をもらう権利を有しているからです。
それと同じように、入社した会社に勤め、辞めるかどうかの権利は会社員側にあるため、転職するにあたって、申し訳なさや罪悪感を感じる必要はないのです。
会社で働いた期間が会社への恩返しになっているから
せっかく会社に時間もお金もかけて育ててもらったのに、辞めるのは申し訳ないと感じてしまう人は多いです。この考え方は非常に誠実にも見えますが、少し実態や感覚と離れている部分があるといえます。
通常、会社員が提供するものは、時間に対する労働力です。その会社が定める業務に、定められた時間、頑張って従事することが義務です。その対価として給料が支払われる仕組みになっています。
会社側が会社員(労働者)を育てようとするのは、より1人1人の労働生産性を高めたい(より効率的に売上・利益を構築したい)という表れであり、労働者側が提供する義務・権利の話とは少し離れることに注意が必要です。
もし、自身が会社にとって重要な存在であり、期待されていたことで、教育の機会や勉強の機会を与えられていたのであれば、それまでの在籍期間で会社になんらかの利益をもたらしたからではないでしょうか。
逆に、教育の機会を与えてもらって、それでも自身が会社に貢献できていないと感じるのであれば、もしかすると今の会社の仕事に自分が向いていないのかもしれません。向いていないのであれば、早めに会社を辞めて他の会社で活躍する方が、会社にも自分にも良い方向に働く可能性が高いといえるでしょう。
転職に罪悪感を感じることで後悔する可能性があること
転職するにあたって、申し訳なさや罪悪感を感じて転職活動を制限することによって生じる、後悔する可能性があることについて解説していきます。
転職のハードルが年々上がってしまう
転職市場において、年齢を重ねるごとに求められる経験やスキルも多くなっていく傾向があります。
求められるスキル・経験に反比例するように求人数は年齢が高くなるごとに減っていく傾向があるため、狭き門を高いスキルや希少な経験を持つ猛者たちと争っていく必要が出てきます。
転職に申し訳なさを感じ、転職活動にブレーキをかけ、年齢を重ねてしまうといざ転職しようと決意しても、そのときには非常に厳しい戦いになってしまう可能性があることを理解する必要があります。
キャリアップ・年収アップの機会を逃してしまう
転職への罪悪感によって転職活動を制限してしまうリスクの1つに、キャリアアップや年収アップの機会を逃してしまう可能性があります。
会社員の年収は業界や企業規模、役職によって大きく異なることが知られています。同じような仕事・仕事量でも業界を変えるだけで年収が大きくアップするということはよくあることです。
また、企業規模を変えるだけで役職がつくということもあるあるです。
こういったキャリアアップ・年収アップのチャンスが転職にはあるのですが、転職に関して申し訳なさを感じ、転職を諦めたり活動に制限をつけることによって、チャンスを無駄にしてしまうのは大きなリスクといえるでしょう。
先述したように、年齢が上がるごとに転職で求められる経験やスキルが高まるだけでなく、年齢が高くなれば未経験職種や未経験業界への転職はどんどん厳しくなっていきます。
チャンスをつかむという点においても、転職に対しての申し訳なさ、罪悪感はリスクといえます。
悩む時間だけが無駄になってしまう
転職することについての罪悪感を持っていて、転職活動を制限したり、転職を諦めたりしても、現在のモヤモヤとした感情は晴れることはありません。
なぜならば、モヤモヤとした感情を抱くようになった原因は解決しないからです。
雇用条件や人間関係、仕事の充実感など、転職を検討するに至った原因によってやるべきことは変わりますが、自分が転職を諦めたところで、そういった根本の原因は変わることはありません。
かといって、転職の要因となるものを自身の力で変更できるのかというと難しいものが多いのも事実です。
転職を一旦諦めたとしても、根本の原因が解決しない限りいつかはまた転職を検討するようになります。先述したように、年齢が上がれば上がるほど転職活動はどんどん難しくなっていきます。
結局悩む時間だけが無駄になってしまうことも多いため、転職に申し訳なさを感じるのはリスクといえます。
モチベーションが下がって目の前の仕事にも影響が出てしまう
転職に罪悪感をもち、転職活動を制限したり転職自体を諦めてしまっても、現在の職場に対する不満感は持ち続けることになります。
それと同時に、「転職していたらどうなったのか」という気持ちを持ち続けることにもなるため、目の前の仕事のモチベーションが下がってしまうでしょう。
人は、行動した後悔よりも行動しなかった後悔の方が大きくなると言われています。
そのため、転職に申し訳なさを感じて活動をしない方向になってしまうのは勿体無いことであるといえます。
最も重要なのは「自分」のためのキャリア形成をすること
転職に申し訳なさを感じてしまう時に、ぜひ考えていただきたいことは、最も重要なことは「自分」のためにキャリアを形成するという意識を持つことです。
現在働いている会社は愛着もあり、責任ある仕事にもついていて、そこで働く人との関係性も非常に重要なものであるのかもしれません。
しかし、大抵の会社はその人が入社する前から活動しており、最低でも定年を迎えてしまえば、それ以降のどこかで必ず退職という形になります。
そのため、必ずどこかで自分の代わりになる人物にバトンタッチをする必要がありますし、そうせざるを得ません。しかし、自分の人生や自分のキャリアは、誰かにバトンタッチすることはできませんし、働く意思があれば、自営業など含めていつまでも仕事ができるかもしれません。
そういった観点から、会社のためではなく、できるだけ自分の意思やキャリアのために転職やキャリアの方向性を決定することをおすすめします。
円満に転職・退職をするコツ
転職することに申し訳なさを感じる人にとって、重要なことは「円満に退職・転職する」ことでしょう。ここからは、円満退職・転職のコツを解説します。
https://salaryup.biz/how-to-tell-retirement/退職意思の表明は早めに行う(1ヵ月以上前が吉)
退職したい旨を会社(上司)に伝える際には、1ヵ月以上前に伝えることをおすすめします。
民法627条において、退職の際、2週間前までに退職を申し出れば法律上は退職が可能という規定があります。
しかし、実際の現場では2週間では引き継ぎが十分に行えないだけでなく、代わりの人を準備するということができないことが多いため、現在の職場の人に大きな影響を与えてしまうことがあります。
こういった実情もあり、多くの会社では就業規則に1ヵ月前までに退職を申し出ることを期限としている場合が多く、それに逆らうような申し出をすると揉める可能性は高いです。
ただし、転職先の会社は、入社を数ヶ月待ってくれるということは稀ですので、現在の会社の就業規則を確認しながら、交渉していくことが重要です。
ポジティブな理由での退職交渉
退職・転職の交渉をする際に、会社(上司)に「会社を辞める理由」を伝える必要があります。退職理由を伝える際にポイントなのが、「会社へのネガティブなこと」を理由として伝えないことです。
もちろん、退職するということは何か不満があることが多いのですが、ネガティブな理由での退職を伝えてしまうと、それを改善することを理由に引き留めにあうことがあり、そうなった場合に退職交渉が難しくなります。
給料が低い
→条件を改善するから残ってほしい
残業時間が長い
→追加で人を雇うから待ってほしい
など、さまざまな引き留めに合うことでしょう。
また、退職の引き留めにあうだけでなく、ネガティブな理由を退職理由にしてしまうと、辞める会社からのよくないイメージを集めることになってしまいます。
スムーズに転職・退職をしたいと考えるのであれば、ポジティブな理由での退職交渉をおすすめします。
転職先は同僚には伝えない
転職先は同僚や会社(辞める会社)の人には伝えないことがベターです。
転職後に嫌がらせを受けることはほぼないといえますが、転職先を知られることによって、退職交渉が難航することが多く、できるだけスムーズな退職や転職を希望する場合には、転職先は伝えないことが重要です。
また、転職先が競合の会社の場合にはさらに揉める原因にもなり得るため、できるだけ同僚には伝えないようにしましょう。
仕事の引き継ぎは丁寧に行う
転職が決まった途端に目の前の仕事へのやる気を無くし、仕事のミスを連発したり、引き継ぎを適当に行うということは厳禁です。
確かにその会社での評価は関係がなく、ミスをしても退職後に怒られたり評価を下げられたりということはありませんが、仕事を適当に行うということは、お世話になった会社や上司、同僚に対する裏切り行為であり、迷惑をかけてしまう行為になります。
そのため、退職する日まで会社の一員であるという認識を持ち、やるべきことは最後まで責任感を持って行い、引き継ぎは伝えることがもうないというレベルまで丁寧に行いましょう。
転職の悩みはプロに相談するのがおすすめ
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まとめ
この記事の内容をまとめると以下のようになります。
- 転職に罪悪感を持つ人は意外と多くいる
- 転職したいのに躊躇するのはリスクがある
- 日本人の2人に1人以上は転職したことがある
- 転職の悩みはプロに相談するとよい
人生を大きく左右する転職は、申し訳なさがなくても悩むものです。1人で悩むのではなく、プロへの相談をおすすめします。