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退職代行を調べていると「非弁行為」「労働組合だから交渉できる」といった言葉が出てきて、結局どれを選べばいいのか分からなくなります。
結論から言うと、退職代行そのものは違法ではありません。ただし運営元がどこかによって、法律上できることが変わります。ここを知らずに選ぶと、「退職はできたが、未払い残業代の話は一切してもらえなかった」ということが起こります。
この記事では、民法・弁護士法・労働組合法の条文を引きながら、3つの運営形態で何が違うのかを整理します。条文は国のデータベース(e-Gov法令検索)で原文を確認したものだけを載せています。
結論|運営元で「代わりにできること」が変わる
先に全体像を示します。退職の意思を伝えるところまでは、どの形態でもできます。差が出るのは、会社と「交渉」が必要になったときです。
| 運営形態 | 退職の意思を伝える | 有給・退職日などの交渉 | 未払い残業代の請求・訴訟 |
|---|---|---|---|
| 民間企業 | できる | できない | できない |
| 労働組合 | できる | できる(団体交渉として) | 交渉はできるが、訴訟の代理はできない |
| 弁護士 | できる | できる | できる |
つまり「ただ辞めたいだけ」なら民間企業でも足ります。一方で、有給を全部消化したい、退職日を指定したい、未払いの残業代がある、という場合は民間企業では対応できません。ここが選び分けの基準です。
そもそも退職に「会社の許可」は要らない
前提として押さえておきたいのが、退職は会社の承諾を得て初めて成立するものではない、という点です。正社員のように期間の定めのない雇用契約については、民法にこう定められています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条第1項(e-Gov法令検索/参照日:2026年9月23日)
「解約の申入れ」は一方的にできる、と書かれています。会社が受理するかどうかは条文に出てきません。申し入れた日から2週間が経てば、雇用契約は終わります。
就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」と書かれていることがありますが、これは社内のルールであって、民法の規定を上回って労働者を拘束するものとは解されていません。実務上は引き継ぎの都合があるので円満に進めるに越したことはありませんが、「認めてもらえないから辞められない」という状態は、法律上は生じません。
契約社員・派遣など期間の定めがある場合
有期契約は原則として期間の途中では辞められませんが、労働基準法に例外があります。
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、(中略)当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法第137条(e-Gov法令検索/参照日:2026年9月23日)
1年を超える有期契約で、開始から1年が過ぎていれば、申し出ることでいつでも退職できます。ただし専門的知識を持つ人や満60歳以上の人(労基法14条1項各号)は対象外なので、自分が当てはまるかは契約書を確認してください。
なぜ運営元で差が出るのか|弁護士法72条
「退職の意思を伝える」のは単なる使者(メッセンジャー)でもできます。ところが「交渉」になると話が変わります。その根拠がこの条文です。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)/e-Gov法令検索・参照日:2026年9月23日
ポイントは「報酬を得る目的で」「法律事件に関して」「代理」や「和解」を「業とする」ことが禁じられている点です。これが非弁行為と呼ばれるものです。
有給休暇の消化や退職日の調整、未払い賃金の支払いを会社に求めることは、労働者と会社のあいだに主張の食い違いがある「法律事件」にあたり得ます。弁護士でない民間企業がそこに踏み込めば、この条文に触れるおそれがあるため、最初から交渉をしないという設計にしているのです。
ただし条文の最後に「他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」とあります。労働組合が交渉できるのは、この例外にあたるためです。
労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。
労働組合法第6条(交渉権限)/e-Gov法令検索・参照日:2026年9月23日
労働組合運営の退職代行は、利用者に組合員になってもらったうえで、組合として会社と団体交渉を行うという形を取ります。弁護士の代理とは根拠が違いますが、交渉すること自体は法律で認められた権限です。
3つの運営形態の違いを具体的に見る
①民間企業が運営するタイプ
株式会社などが運営し、本人の退職の意思を会社に伝えるところまでを担います。料金が2万円前後と安く、対応が早いのが利点です。
一方で、会社から「直接話をさせてほしい」「退職日はこちらで決める」と言われたとき、代わりに交渉することはできません。本人が対応する必要が出てきます。
たとえば退職代行ニコイチは株式会社が運営する民間型で、創業からの実績が長いサービスです。詳しくは退職代行ニコイチの評判・口コミにまとめています。
②労働組合が運営するタイプ
合同労働組合(ユニオン)が運営し、利用者が組合員になったうえで団体交渉を行います。有給消化、退職日の調整、会社からの貸与物の返却方法といった話を、本人に代わって会社と詰められます。
料金は2万〜3万円程度で、民間型との差は数千円ということも珍しくありません。交渉が必要になるかどうかが読めないなら、最初から労働組合型を選んでおくほうが安全です。
当サイトで取り上げている労働組合型には次のようなサービスがあります。
- 退職代行ガーディアン|東京労働経済組合という労働組合法人が運営
- 退職代行モームリ|労働組合運営で、弁護士監修を明示
- 退職代行ネルサポ|労働組合運営、弁護士指導のもと業務
- 男の退職代行|合同労働組合「退職代行toNEXTユニオン」が運営する男性専門サービス
このうち男性専門なら男の退職代行、女性専門ならわたしNEXT
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③弁護士が運営するタイプ
弁護士・弁護士法人が運営し、交渉はもちろん、未払い残業代の請求や、話がこじれた場合の訴訟まで一貫して任せられます。弁護士法72条の制約を受けないので、対応できる範囲に制限がありません。
料金は5万円前後からと高めで、回収額に応じた成功報酬が別途かかることもあります。ハラスメントを受けていた、損害賠償をちらつかされている、未払い賃金がまとまった額になるといったケースでは、最初からここを選ぶのが結果的に早いことが多いです。
弁護士型の例は弁護士法人みやびの退職代行の評判・口コミをご覧ください。
補足|行政書士が運営しているサービスもある
3類型に収まらない例として、行政書士が運営する退職代行があります。退職代行リトライがこれにあたります(評判・口コミはこちら)。
行政書士は書類作成の専門家ですが、弁護士法72条の例外にあたる根拠を持たないため、会社との交渉や未払い賃金の請求はできません。対応できる範囲としては民間企業型と同じだと考えてください。「士業が運営しているから交渉もできる」と読み違えないよう注意が必要です。
自分のケースではどれを選ぶか
上から順に当てはめてください。1つでも当てはまったら、その行の形態以上を選びます。
| あなたの状況 | 選ぶべき形態 |
|---|---|
| 未払い残業代・給与がある/ハラスメントの損害賠償を考えている/会社から損害賠償を示唆されている | 弁護士 |
| 有給を全部消化したい/退職日を指定したい/会社が話し合いを求めてきそう | 労働組合以上 |
| 上のどれにも当てはまらない。ただ退職の意思を伝えてほしいだけ | 民間企業でも可 |
サービス単位の比較は退職代行サービスおすすめ13選!実際の口コミや料金体系から徹底比較にまとめています。運営形態と料金を並べているので、この記事で形態を決めてから見ると選びやすいはずです。
依頼する前に確認したい5つのこと
- 運営元が何者か。「労働組合と提携」と「労働組合が運営」は別物です。公式サイトの会社概要で、組合名や弁護士名が明記されているかを見てください
- 交渉が必要になったときどうなるか。「対応できません」で終わるのか、提携先に引き継ぐのかを事前に聞いておきます
- 料金に何が含まれるか。追加料金の有無、返金保証の条件、成功報酬の割合
- 退職届と貸与物の扱い。多くの場合、退職届の提出と制服・PC等の返却は自分で郵送します
- 離職票・源泉徴収票の受け取り方法。失業給付や次の職場の手続きに必要なので、送付先の指定まで依頼できるか確認します
1つ目がいちばん間違えやすいところです。「労働組合と提携している民間企業」は、交渉を組合が行うのか自社が行うのかで意味が変わります。後者なら民間型と同じ制約を受けます。
退職代行の法的な位置づけについてよくある質問
- 退職代行を使うと違法になりますか?
退職代行を利用すること自体は違法ではありません。退職の意思表示は本人の権利であり、それを伝える手段を他人に委ねることを禁じる法律はないためです。ただし運営元が弁護士法72条に触れる範囲まで踏み込んだ場合は、その業者側の問題になります。
- 会社が退職を認めてくれない場合はどうなりますか?
期間の定めのない雇用契約であれば、民法627条1項により、解約の申入れから2週間の経過で雇用は終了します。会社の承諾は条文上の要件になっていません。就業規則に「1か月前まで」とある場合も、社内のルールとして扱われます。
- 民間企業の退職代行は非弁行為になるのですか?
意思を伝えるだけなら問題になりません。交渉や和解にあたる行為を報酬を得て業として行った場合に、弁護士法72条の非弁行為が問題になります。民間型の多くが「交渉はしない」と明示しているのは、この線を越えないためです。
- 労働組合の退職代行はなぜ交渉できるのですか?
労働組合法6条が、労働組合の代表者や委任を受けた者に、組合員のために使用者と交渉する権限を認めているためです。弁護士法72条のただし書き「他の法律に別段の定めがある場合」にあたります。利用時に組合員になる手続きがあるのはこのためです。
- 有期契約(契約社員・派遣)でも退職代行は使えますか?
使えます。ただし退職できる条件が異なります。1年を超える有期契約で開始から1年が経過していれば、労働基準法137条により申し出ていつでも退職できます。専門的知識を持つ人や満60歳以上の人は対象外なので、契約内容の確認が必要です。
- 行政書士が運営する退職代行なら交渉もしてもらえますか?
できません。行政書士は書類作成の専門家であり、弁護士法72条の例外にあたる根拠を持たないため、会社との交渉や未払い賃金の請求はできません。対応できる範囲は民間企業型と同じと考えてください。
まとめ|先に「交渉が要るか」を決める
- 退職代行の利用そのものは違法ではない。差が出るのは「交渉できるか」
- 期間の定めのない雇用なら、申入れから2週間で契約は終了する(民法627条1項)
- 民間企業が交渉できないのは弁護士法72条があるから。行政書士運営も同じ制約を受ける
- 労働組合が交渉できるのは労働組合法6条が根拠。72条のただし書きにあたる
- 未払い賃金や損害賠償がからむなら弁護士一択。迷うなら労働組合型
サービス選びに進む場合は退職代行サービスおすすめ13選へ。辞めたあとの動き方については仕事を辞めてから転職活動は危険!あり得るデメリットと解決策もあわせてご覧ください。
参考にした条文
条文はいずれもe-Gov法令検索で原文を確認しました(参照日:2026年9月23日)。本記事は法令の一般的な説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士等の専門家にご相談ください。


















