会社員になってから気合を入れて勉強して目指す資格の1つが「弁護士(司法試験)」です。
司法試験、弁護士資格取得にチャレンジする人にとって気になるのが、試験の難易度や弁護士資格取得後の年収や働き方に関する情報でしょう。
そこでこのページでは、弁護士の年収や働き方による収入の違い、取得にかかる費用、難易度について解説します。
弁護士の年収
まずは、最も気になる点である弁護士の年収についてみていきます。
ちなみに、弁護士になるために合格する必要のある「司法試験」ですが、司法試験に合格すると以下の3つの「法曹」と呼ばれる法律の専門家になるための道が開かれます。
- 弁護士
- 検察官
- 裁判官
この中で最も人数が多く、最も活動の幅が広いのが弁護士であるため、「司法試験=弁護士」のイメージがついているといえます。
そのため、ここからは弁護士以外の他の法曹も含めて年収を解説していきます。
弁護士の平均年収
弁護士の平均年収を、厚生労働省が監修しているjobtagから読み解くと、945.4万円となります。
これには、弁護士事務所所属の弁護士、弁護士事務所の代表の弁護士、企業に在籍している弁護士などさまざまいますので、一括りにできない点もありますが、日本の平均年収が440万円ほどということを考えても、やはり高い年収が期待できることがわかります。
ただし、2006年から開始された新司法試験制度によって、司法試験合格者が増加する傾向になり、弁護士の資格を持っていても顧客(クライアント)を獲得できないことも多く、独立した弁護士でも年収500万円程度に落ち着いてしまう人材がいるという点には注意が必要です。
検察官の平均年収
検察官については、弁護士と違い、司法試験に合格し、公務員試験も突破した国家公務員に当たるため、人によっての年収の差が少なく、階級によって一定程度年収が決まっていることが特徴です。
以下の表が2022年現在の検察の基本給区分です
区分 | 法律上の基本給(月) |
検事総長 | 1,466,000円 |
次長検事 | 1,199,000円 |
検事長 | 1,199,000〜1,302,000円 |
検事(1号) | 1,175,000円 |
検事(10号) | 387,800円 |
検事(20号) | 231,400円 |
副検事(1号) | 574,000円 |
副検事(17号) | 212,200円 |
司法試験に合格して、司法修習を終えた人材が検察官になる場合には、基本的には検事(20号)からスタートすることになります。出世するスピードは人それぞれになりますが、出世していくと表の上の方に向かっていきますので、高年収がほぼ約束されていることがわかります。
表をみると、検察官の年収は500〜2,300万円といえるでしょう。
裁判官の平均年収
裁判官も、検察と同じく国家公務員であるため、階級によって決定されています。
区分 | 法律上の基本給(月) |
最高裁判所長官 | 2,010,000円 |
最高裁判所判事 | 1,466,000円 |
高等裁判所長官 | 1,302,000〜1,406,000円 |
判事(1号) | 1,175,000円 |
判事(4号) | 818,000円 |
判事(8号) | 516,000円 |
判事補(1号) | 421,500円 |
判事補(6号) | 304,700円 |
判事補(12号) | 234,900円 |
簡易裁判所判事(1号) | 818,000円 |
簡易裁判所判事(8号) | 364,900円 |
簡易裁判所判事(17号) | 234,900円 |
司法試験に合格し、裁判官に任命(任官)されたあとは、判事補12号からキャリアがスタートします。この際の月額報酬は検察官と同様です。
しかし、裁判官の場合には、判事補のあとのキャリアが判事でキャリアがストップする人材がほとんどで、高等裁判所の長官や最高裁判所の判事や長官になることができる人は本当に一握りしかいません。
裁判官(特に最高裁判所)の判断は、今後の一種の法律のようなもの(判例)となるため、一定以上に評価された人材しか辿り着けない境地といえるでしょう。
そのため、年収500〜3,000万円が裁判官の年収となりますが、ほとんどの裁判官が最高でも年収1,500万円程度となるでしょう。
弁護士の年収・給与形態例
ここからは、具体的に「弁護士を募集している求人」として転職サイトdodaに掲載されているものを例に挙げて、ご紹介します。
事業会社法務担当
業種 | 不動産・建築 |
給与条件 | 月給 313,500円〜 + 手当 55,000円 +賞与 |
入社時想定年収 | 740万円~1,200万円 |
年間休日 | 123日 |
弁護士資格 | 必須 |
金融機関法務担当
業種 | 銀行 |
給与条件 | 月給 356,300円〜 +賞与 |
入社時想定年収 | 700万円~1,200万円 |
年間休日 | 122日 |
弁護士資格 | 必須 |
相続・コンサルティング企業
業種 | 不動産・相続 |
給与条件 | 月給25万5000円以上+各種手当+賞与年2回+決算賞与 |
入社時想定年収 | 750万円 |
年間休日 | 120日以上 |
弁護士資格 | 優遇 |
弁護士事務所
業種 | 法律相談 |
給与条件 | 月給50万〜+各種手当+賞与 |
入社時想定年収 | 700万円 |
年間休日 | 120日以上 |
弁護士資格 | 必須 |
このように、弁護士資格が必須の求人は、雇用条件が良い場合が多いです。
また、企業内弁護士の需要が多くなっているため、今後は、事業会社に所属している弁護士の活躍が多くなることが予想されます。
弁護士の資格を活かして年収アップを狙う方法
ここまでみてきたように、弁護士の収入や雇用条件は雇用される法人の規模やポジションによって差があります。
ここからは、弁護士の資格取得者が年収を上げる方法について解説します。主に次の4つになります。
- CLOとして稼ぐ
- 弁護士事務所に所属して稼ぐ
- コンサルティング企業に所属して稼ぐ
- 独立して稼ぐ
1つずつ詳しくみていきます。
CLOとして稼ぐ
CLOとは、Chief Leagl Officer(チーフリーガルオフィサー)の略で、企業の法務部門のトップを指します。
CLO自体はあまり知名度がありませんが、近年企業で導入が進んでいるポジションです。弁護士資格を保有している人材が着任することがほとんどで、弁護士資格をフル活用できるポジションといえます。
企業法務部門のトップであり、多くの場合は役員になりますので、役員報酬として高い収入を獲得することができます。
もちろん、企業の法務部門に弁護士として在籍するだけでも比較的高い年収を獲得することができます。
弁護士事務所に所属して稼ぐ
弁護士になったら、多くの人材は弁護士事務所に在籍して、いわゆる弁護士として法律相談や実務の対応をして仕事をしていきます。
所属する弁護士事務所の特徴によって、個人の債権債務問題や親権・離婚トラブル、法人の顧問弁護士など、取り扱う内容に偏りがあることが多いため、注意が必要です。
一定規模以上の弁護士事務所であれば、所属して問題なく仕事をしていれば年収1,000万円に届くことも難しくないでしょう。
コンサルティング企業に所属して稼ぐ
税金や相続、不動産やM&Aなど、法務関係によって大きく結果が変わったり、リスクが大きい可能性がある場合などの案件を扱うコンサルティング企業では、弁護士資格を保有していることは武器になりやすいです。
法律面からの専門的なアドバイスや戦略策定によって大きく信頼を勝ち取ることができ、会社からも評価されやすいため、大きな報酬を得ることもできるでしょう。
独立して稼ぐ
クライアントからの法律相談に際限無く対応するためには、弁護士資格が必要です。
そのため、弁護士資格を保有しているだけで法律相談に対応することができ、仕事として回すことができるため、独立も現実的な選択肢といえます。
弁護士事務所を設立しクライアントを多く獲得することができれば、収入は青天井になるため、夢のような収入を獲得することも可能です。
弁護士の資格試験の難易度や取得に必要なお金
ここからは、司法試験、弁護士資格取得に必要なお金や難易度について解説していきます。
司法試験の試験の概要と難易度
項目 | 内容 |
---|---|
種類 | 国家資格 |
受験資格 | (1)法科大学院の卒業 (2)予備試験の合格 |
合格率 | 30%前後 |
勉強時間目安 | 5,000〜10,000時間 |
申し込み期限 | 3月下旬〜4月上旬 |
試験日程 | 論文式試験:7月上旬〜中旬(3日間) 短答式試験:7月中旬 |
合格発表 | 合格発表:11月上旬 |
司法試験は、非常に難関な試験として有名ですが、合格率の数字だけを見れば30%前後と比較的高いように思えます。
しかし、その理由は、司法試験の本番の試験よりも難易度が高いとまで言われる予備試験の合格や、法曹になるための専門的な学校である法科大学院の卒業が司法試験の受験資格となっているため、そもそも受験するハードルが非常に高いことが挙げられます。
司法試験は非常に広い範囲の知識を詰め込む必要のある試験であり、必要とされる勉強時間も非常に多いため、合格に向けて戦略的に学習を進めていく必要があります。
司法試験合格・弁護士資格取得にかかる費用
司法試験に合格するまでにどんな費用が発生するのかを解説します。
受験手数料:28,000円
受験手数料は、1回の試験で28,000円となります。1発合格できれば、28,000円だけで済みますが、多くの方は複数回受験することになりますので、2,3回の支払いは覚悟しておくと良いでしょう。
予備試験受験手数料:17,500円
司法試験の受験資格を獲得できる1つのルートとして、予備試験の合格があります。予備試験に1〜2回で合格することができれば、法科大学院への入学・卒業よりも安価で時間的にも早く司法試験への受験資格を獲得することができます。
また、法科大学院卒業者よりも、予備試験合格者の方が司法試験の合格率が高く、予備試験合格者の90%前後の人が司法試験の本番に合格するという結果になっていますので、最短最速で合格を目指す場合には、予備試験にチャレンジするとよいでしょう。
ただし、予備試験の難易度は司法試験の本番よりも難しいと言われることも少なくありませんので、相応の勉強時間と試験対策が求められます。
法科大学院の学費:1,890,000〜4,200,000円
司法試験の受験資格を獲得するもう1つのルートが、法科大学院の卒業です。法科大学院は、各大学の大学院として設置されており、入学金や年間の授業料などが必須になります。
私立大学の法科大学院か、公立大学の法科大学院かによって大きく費用が変わってきます。また、どの法科大学院に通うのかによっても司法試験の合格率も変わりますので、どこに入学するのかを戦略的に考える必要があります。
予備試験よりも合格率が劣りますが、司法試験の受験資格を獲得するという点に関しては、予備試験合格よりも比較的難易度が低いため、受験資格を得るためにチャレンジするという意味では、良いルートといえます。
市販のテキスト・教材購入費:〜45,000円
市販のテキストや教材で独学で司法試験に望むことはできなくはありませんが、実際のところ、予備試験ルートでも法科大学院ルートでもほとんどの方が予備校や講座の受講をしているため、完全独学で司法試験に合格しようとするのは難しいといえるでしょう。
しかし、理解を深めるためや別の視点からの問題演習をしたい場合に、市販のテキストや教材を購入するのは良い方法といえます。
以下のシリーズが人気が高いです。
予備校・講座費用:128,000〜1,350,000円
予備校に通うのか、通信講座を選択するのかによって、費用は大きく変わります。
費用の面で考えても良いですが、合格実績などを考えて選択すると良いでしょう。日本で最も有名な司法試験予備校(講座)といえるのが、伊藤塾です。
2022年の司法試験合格者1,403名のうち、1,132名(80.6%)が伊藤塾の有料講座受講生であることを鑑みると、最も合格に近い予備校(講座)といえます。
確かに安くない費用がかかりますが、合格のために一念発起するにはベストな選択肢といえます。
合格までに必要な費用まとめ
ここまでご紹介した内容をまとめます。
- 予備試験ルート(予備校・講座)
-
- 受験費用:28,000円
- 予備試験費用:17,500円
- 予備校・講座:130,000〜1,350,000円
- 合計:200,000〜1,400,000円
- 予備試験ルート(独学)
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- 受験費用:28,000円
- 予備試験費用:17,500円
- テキスト費用:45,000円
- 合計:100,000円
- 法科大学院ルート(予備校・講座)
-
- 受験費用:28,000円
- 法科大学院:1,890,000〜4,200,000円
- 予備校・講座:130,000〜1,350,000円
- 合計:2,050,000〜5,600,000円
- 法科大学院ルート(独学)
-
- 受験費用:28,000円
- 法科大学院:1,890,000〜4,200,000円
- 予備校・講座:45,000円
- 合計:1,950,000〜4,300,000円
となります。
合格率や難易度を考えると、予備試験(講座・予備校)ルートか、法科大学院(講座・予備校)が最も合格に近い道といえそうです。
まとめ
このページでは、弁護士の年収や働き方、資格の取得難易度などについて解説しました。
- 弁護士資格(司法試験合格)は取得できれば、年収アップが期待できる
- 通信講座や予備校利用がおすすめ
- 合格を本気で目指すなら伊藤塾がおすすめ
- 弁護士資格を取得するための費用は、予備試験ルートか法科大学院ルートかによって大きく変わる
このページを参考に、ぜひ税理士にチャレンジしてみてください。